「シアワセに働いていますか?」 ~成果とモチベーションを生む職場~
【第1回】 持続する「成長」、失速する「成長」
■ 「シアワセに働くこと」を考える
このコラムでは、「シアワセに働くこと」について考えます。幸福、Happinessは、人生の質や価値に関わる重要な概念です。そして、「働く」ことは幸福感と密接な関係を持っています。過去の研究に、「幸福度の高い従業員は生産性が高い」というものがあります。シアワセであることが仕事の成果を向上させるのです。逆の関係も明らかになっています。「失業は、離婚よりも、大きく幸福度を低下させる」というものです。失業は、所得などの経済的なインパクトだけでなく、不安や自尊心の低下を引き起こすからです。仕事はシアワセに大きく影響しています。
働く人の職業観、働く目的、そして働き方が多様化した今、「幸福感と仕事」という、より根本的なアプローチで「働くこと」を検討し、これからの職場づくり、組織づくりの参考となる情報を提供したいと思っています。
内閣府が2007年に行った「幸福度における研究」では、現代の幸福の源泉は、社会的承認、仕事の評価、ゆたかな社交、自由な学びなどである、としています。今回は、自由な学びに深く関係する「成長」について考えたいと思います。
■ 「成長した」という実感、「成長していきたい」という欲求は、仕事の喜びとつながっている
JTBモチベーションズがこの1月に行ったインターネットリサーチ、「若手社員の成長と、上司の意識とのギャップに関する調査」では、若手社員309人(入社1~3年目、22~25歳)の84.5%が「1年前に比べて、成長したと思う」と答え、86.8%が「今後、さらに成長していきたい」と答えています。
※「若手社員の成長と、上司の意識とのギャップに関する調査」JTBモチベーションズより <詳細はこちら>

そして、このような成長の実感や成長欲求は、「今の仕事が好きである」「今の仕事に喜びを感じる」という項目と有意な相関があることもわかりました。「成長した」「成長していきたい」は、幸福感に近い感情とつながっているのです。
どのようなときに成長を実感するかを自由記述で回答してもらうと、「日々の業務の中や、上司との会話のなかで、実際に『成長したな』などと言ってもらえたとき」(男性、24歳、入社2年目、顧客対応・サービス系)、「上司に叱られてもアイデアを批判されても、それをしっかり受け止めることができ、次への仕事の成果に繋げることができるようになった」(女性、23歳、1年目、開発・製造)などのコメントがあり、それぞれが努力する様子や、自らの成長に充実感を覚えている様子がうかがわれます。
こうして成長が実感できれば、さらに成長していきたい、と思うようになり、また成長を実感する、という良循環が機能するでしょう。
■ 2,3年目で、成長欲求は落ちる
しかし、この良循環が破綻し始める傾向が、入社2,3年目から見られるようになります。「今後、さらに成長していきたいと思っている」の項目に、「あてはまる」「ややあてはまる」と答える1年目社員が94.2%だったのに対し、2年目では81.6%、3年目は84.5%とやや少なくなっており、有意な差が見られました。
また、「今の仕事に喜びを感じている」については、2年目で低下、さらに3年目で低下しています。「今の会社で働き続けたいと思っている」「今の仕事が好きである」でも同様の傾向が見られました。


2年目、3年目と入社年度が高くなるほど、1年目よりも、成長欲求や仕事の喜び、今の会社への勤続意欲が低くなっているのです。これはどういうことなのでしょうか。
調査データからは、2,3年目でキャリア目標を見失い、研修を受ける機会が減っている様子も見て取れました。1年目社員は、入社したときの夢や目標をまだ持ち続けており、さらに新人研修によって、仕事への意識が高まり、同期入社の仲間ともライバル意識を燃やし合うなどして、成長への意欲や勤続への意欲を高めているのでしょう。しかし、2,3年目となると、その効果が薄れてしまうようです。
■ 成長し続けるための「日常」と「非日常」
2年目、3年目は仕事を任され、大きな責任と成果が発生し始める時期です。そんな大切なときに、成長欲求や仕事の喜びが低下し、業績に影響が出るという事態は避けたいものです。
解決のヒントは、先述のキャリア目標と研修機会というキーワードだと思います。キャリア目標という、いわば将来の姿、そして業務を一旦離れる研修の場。これらは、日々の仕事という「日常」に対して、「非日常」の世界です。成長の失速を回復するためには、この日常と非日常の両方をうまく活用し、かみ合わせることが必要だと思います。
日常の中では、業務知識や技術を身に付け、顧客と渡り合い、上司にほめられたりしかられたりして、地道にチカラをつけていきます。一所懸命にやる時期があり、一区切りついたタイミングで、自分の成長を実感する。
これの絶え間ない繰り返しが、成長の基盤となります。このプロセスには、上司や先輩社員のサポートが欠かせません。適切な業務や目標を与え、遂行を見守り、折に触れてフィードバックをし、信頼関係をつくり、その中で、さらに有意義に関わっていく。「上司との会話のなかで、実際に『成長したな』などと言ってもらえたとき(に成長を実感する)」という、調査データの自由記述の通りです。成長には、本人の努力と周囲の支援が欠かせません。
■ 成長の「未来図」と「世界地図」
そして、非日常では、成長の未来図、世界地図を広げます。未来図は、時間軸に沿って展開するキャリア・ビジョンや成長目標です。今現在の仕事だけでなく、それが自分の未来にとって、どのような意味があるのか、自分はどのような像をめざすのかを、考える機会を持つことが重要です。研修に参加したり、関連する書籍を読んだり、志を同じくする仲間と勉強する場を作ったり、ということが考えられます。
世界地図は、今の職場以外、社外の世界を知ることで、広げることができます。まずは、社内の他の部門の人たちと交流することが、最初の一歩となります。違う価値観に触れると、自分の価値観を見直すことになります。成長のチャンスです。徐々に行動を広げ、業界内の研究会などに参加する、業界を超えた社外の人脈を持つ、というステップに進んでいきます。さまざまな職業人を知ることで、成長の方向や、成長の方法に関しても、選択肢が広がります。
シアワセに働くための「成長」、成長するための「日常」と「非日常」、そして「未来図」「世界地図」について考えてきました。シアワセは、ゴールではなくプロセスです。迷ったり悩んだりしながら、成長したいと願い、前進し続ける、その過程そのものがシアワセなのではないかと思います。結果は仕事の成果となってついてきます。
- 菊入 みゆき
- 株式会社JTBモチベーションズ
- モチベーション・コンサルタント
1993年、株式会社JTBモチベーションズ創立時に入社、以来、ワークモチベーション(仕事意欲)の調査、研究、コンサルティングに携わる。開発した商品は、「やる気」分析システムMSQ、個人向け「やる気」診断サービス,各種研修プログラム 等。個人と組織の活性化を、モチベーション、キャリア開発、コーチングなどの視点から提案する。
「できる人の口ぐせ」中経出版、「やる気が出ないとき読む本」東洋経済新報社、「やる気を生みだす気づきの法則」幻冬舎など、著書多数。
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