・介護保険における法令遵守
介護サービス事業者による不正事案の再発防止および介護事業運営の適正化を図るため、平成21年5月1日から、介護サービス事業者は、法令遵守等の業務管理体制の整備が義務付けられました。
事業者が整備すべき業務管理体制は、指定又は許可を受けている事業所又は施設の数に応じ定められ、それに関する届出書を関係行政機関に届け出ることとされました。
・事業者が整備する業務管理体制
事業者が整備すべき業務管理体制は以下のようになっています。
業務管理体制の 整備の内容 |
業務執行の状況の監査(注5)を定期的に実施 |
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法令遵守規程(注4)(業務が法令に適合することを確保するための規程)の整備 |
法令遵守規程(業務が法令に適合することを確保するための規程)の整備 |
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法令遵守責任者(注3)(法令を遵守するための体制の確保に係る責任者)の選任 |
法令遵守責任者(法令を遵守するための体制の確保に係る責任者)の選任 |
法令遵守責任者(法令を遵守するための体制の確保に係る責任者)の選任 |
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指定又は許可を受けている事業所等の数 (注1) (みなし事業所(注2)を除く) |
100以上 |
20以上100未満 |
1以上20未満 |
(注1) 事業所等の数には、介護予防及び介護予防支援事業所を含みます。例えば、訪問介護と介護予防訪問介護を行っている事業所の数は、2となります。
(注2) みなし事業所:病院等が行う居宅サービス(居宅療養管理指導、訪問看護、訪問リハビリテーション及び通所リハビリテーション)であって、健康保険法の指定があったとき、介護保険法の指定があったものとみなされている事業所をいいます。
(注3) 法令遵守責任者について
法令遵守責任者には、何らかの資格等を求めるものではありませんが、少なくても介護保険法及びそれにに基づく命令の内容に精通した法務担当の責任者を選任することを想定しています。
(注4) 法令遵守規程について
法令遵守規程には、事業者の従業員に少なくとも介護保険法法及びそれに基づく命令の遵守を確保するための内容を盛り込 む必要がありますが、必ずしもチェックリストに類するものを作成する必要はなく、事業者の実態に即したもので構いません。
(注5) 業務執行の状況の監査について
事業者が医療法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人、株式会社等であって、既に各法の規定に基 づき、その監事又は監査役(委員会設置会社にあっては監査委員会)が介護保険法及びそれに基づく命令の遵守の状況を確保する内容を盛り込んでいる監査を行っている場合、
その監査をもって介護保険法に基づく「業務執行の状況の監査」とすることができます。
この監査は、事業者の監査部門等による内部監査又は監査法人等による外部監査のどちらの方法でも構いません。
※法令遵守の義務化のきっかけ
業界最大手コムスンの不正問題がきっかけとなり、介護保険業界での法令遵守等の業務管理体制の整備が義務化されました。
簡単な事件のあらましは以下の通りです。
(概要)
2006年12月から2007年5月にかけて介護報酬の不正請求や違法な指定申請が発覚。
同社は処分を逃れるため、不正行為・違法行為を行った事業所を閉鎖。
厚生労働省はこの一連の行為を悪質と判断し、2007年6月に事業者が重大な不正を働いた場合、他の事業所も含め5年間、新規指定や6年ごとの更新を受けられなくなる(連座制の導入)との規定に基づき処分。
同社は一時、グループ内の別会社に譲渡する方針を決めたが、これも「処分逃れ」との批判を受け、外部への譲渡に転換。
同社の第三者委員会が2007年9月に47都道府県ごとに他の大手介護事業者や医療法人への分割譲渡を決定。
施設介護の分野は業界大手のニチイ学館が受け継ぐこととなった。